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ほんの少し深呼吸して、心臓を落ち着かせる。
緊張で震えながら、鍵穴にゆっくりと鍵を差し込む。
当たり前のことだが、すんなりと入った鍵。
ゆっくりと右に回してみると嫌な音もたてずに、カチャンとロックが外れた。
ギイっとドアを引くと階段の明かりだけが、ぼんやりと室内に差し込む。
手探りでドア付近を探すとパチンとスイッチらしきものに触れて、アンティークなシャンデリアライトがオレンジ色の光を放った。
三面あるだろう高い窓は全て雨戸が閉め切られていて、外からの光を全て遮断されていた。
本好きのおばあさまのこと。
勝手に書庫だとばかり思っていたその部屋には、本棚も一冊の本すらもなく。
深緑色の、これまた分厚い布で覆われた大きな水槽ぐらいありそうな箱型の、なにかが部屋の真ん中に置かれていた。
心臓がドクドクと早鳴り、大きな音をたて始める。
ゴクリと飲んだ自分の唾の音さえも響き渡るこの部屋の中で、脳裏に一瞬過ったものを必死に消し去ろうとした。
このサイズのものを近頃見たことがある。
おばあさまが亡くなった時、これくらいの大きさの棺桶に入っていた。
そ、そんなわけがない!
嫌な予感を振り払おうとしても、一度考えてしまったせいで、最早そのものにしか見えなくなってしまって足がすくむ。
けれど、おばあさまが秘密にしていたものは、この深緑色の布の下にあるのかもしれない。
それに棺桶なんかあるわけがない。
恐怖心と興味心の間で、葛藤して一分後には、決着がつく。
嫌な汗をかきながら、震える指で深緑の布を持ち。
えいっ、と一気にはぎ取った。
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