タヒにたい私

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タヒにたい私

サヨナラなんて、軽い口笛を吹きながら、私は堤防の上を歩いていた。 傍で幹雄は、私の事を遠い目で見やり、打ちひしがれていた。 君がそんな子になってしまったのは、ビクビク怯えているからだよ。 忘れなよ…? 彼女は哀しい目を浮かべ、俯いた。 "死んだら、遺影に逢いに来てね" クス と彼女は冷ややかに笑った。 それから三ヶ月後に、彼女は海岸線の堤防のテトラポッドの防波堤に遺体となって打ち上げられて、発見された。 過去の記憶がフラッシュバックして、蘇る。 殺して としきりに何度も彼女は泣いていた。 僕は、傍で話を聴いてやるしか出来なかった。 彼女の遺影に本当に行くと、まさかこんな形で、別れるとは、夢にも思わなかった。 "人って本当に死ぬんですね" 遺影に手を合わせている横で彼はボソリとそう、親族の前で言うと、家族の一人が、弟さんが、こう言う。 ネェちゃんはアンタが好きだったんだよ。どうして、手を離したりしたんだ?!! ネェちゃん、アンタしか居ないって泣いていたぞ!! 全部お前のせいだ!!!!! 私はその通りだと思った。 スッと立ち上がり、家を出た。 暫く、無言で坂道を降ると、拓けた丘に出た。 そこで、僕は本当にこの世からいなくなってしまった彼女の事を小さな声で、見送った。 お疲れさん、よう頑張った。 もう、エエで。 大空を見上げると、青の空に、白い雲の巻層雲が、浮かんでいる。 こんな世界に生まれ、僕は君と出逢った。 僕だけが取り遺されて、まだ、生きている。 死んだら終わりだよ 馬鹿野郎!!!!!!! 涙が溢れて、止まらない。 この世界が、僕の為にない事を、僕は知らなかった。 僕は大声で泣いた。 誰が、自分の為に生きてくれているのだろう? そんな人はもう、一生現れないだろう。 彼女は、被虐待児だった。 僕は、負担だった。 彼女は、遺影で笑っていなかった。 全部、忘れてよ。 まるで、そう言っているみたいだって… バカだな… 遺影に手を合わせて、私は背後の影に覚束ない足取りで、残りの坂を降った。 この街が、今だに好きになれず、僕は、夜を滑る。 また、明日が来るまでの間に忘れられるか、賭けていたのかもしれない。 結果は惨敗だった。 人間を信じられなかった哀しい少女が、また一人僕の前から姿を消した。
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