冴子

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冴子

鮫島くんって不気味な名前ー。冷めた目で、冴子がそんな事をボソリと呟いたとき、僕はハテナと思うだけだった。 鮫島は、何がなんでも冴子の事を自分のモノにしたいらしい。 色んなあの手この手を使って、何がなんでも自分の思い通りにしようとするトコロが、どことなしか、往年のstarを思わせる。 尾崎豊って人が、今遺体が安置されているところに行ってみない? そう、唐突に言われ、僕は目を丸くした。 なんで?また? 知らないの?尾崎豊、オレの母校の出身なんだよ。だからさー!一度は墓前に手を合わせてみたいって言う思いが有ったんだ。 へぇ、それはまた、ご立派ですね? 知らないですけど、TVでしか、見たことないし、当然もうとっくに死んでるわけで。 知ってる?凛として時雨のvocalが、尾崎豊ずっとひっきりなしに聴いていたって。 へぇ?そうなの?凛として時雨は、知ってるよ。 昔、レンタルしてた頃、ブックレットに書いてあった。いまだに謎なんだけど、当時の記事探しても見つからないんだよ、不思議だよね。 やっぱunravelっしょ。 知らないなぁ?オレは詳しくないよ。 え?知らないの?じゃなんで今そんな話した? いや、音楽が詳しくないって意味だよ。それに俺、TKさんって人あまり、尾崎とは性格が違うって思ってる。もし、本当に昔聴いてたら、オレも好きになってるよ。だけど、あの人の作る音楽って何処となく退廃的だよな… 鮫島は、偉く冷静に物事を捉えていた。冴子と言う女の子は、僕の友達だった。なんでまた、こんな事になってしまったのか?僕は眠たい目をこすりながら、相棒に付き合っている。 しかし、それとは別に、僕は今彼女の事が、これから先、好きになるかもしれない不安に苛まれて居る。オレと冴子は、よく口にするが、彼は、あまりまともでは無いわよ、と酷く卑しげに言う。彼とは、勿論鮫島くんの事だ。なんで、そんな奴と今でもつるんでいるのか分からないと言われた。 知らないんだよ、鮫島くん、あいつ結構イイ奴だぜ? そんな事どうでもイイじゃん、少しムッとした様に冴子がこんな顔をしたのは、初めて見た。 いや、なんていうかその… …君もそうだけど、あんまり男友達ってのは感心しないな? ん?なんで? わからない? いや、ワカンねぇよ。 冴子は口をつぐみ、ため息を吐いた。 どうしたのか、何を彼女が考えて居るのか、全然わからなかった。 別にオレはお前があいつの事よく思ってないのから、それでもイイ。アイツの言うことなんて聞く必要無いし。オレはアイツのことなんてどうでもイイし。 …鮫島くんは女の子昔酷い目に負わせてるんだよ… …エ? 殴ったり、ボコボコにして、無理やり犯したらしいよ…本当に信じられない。 軽蔑の眼差しで冴子は冷めていた。 … まさか、そんな奴だとは思いもしなかった… ほどなくして、僕は、彼と連絡を一切絶ってしまった。携帯のLINEも、着信拒否もして、僕は、学校でも鮫島が話しかけて来ても、相手にしなくなった。僕の中で一切の関心が消えてしまい、僕は何も触れてほしく無いと想い、以後、彼も僕に寄り付かなくなって、消えてしまった。また、別の悪い友達を見つけ、尾崎の墓参りに行ったらしい。僕は、そんな人とは仲良く出来なかった。 冴子が言った事が本当か嘘なのか?良く真偽が定かじゃない。けれど、僕は無理して付き合っていたのは事実だから、何処かで彼の事を怯えていたのかもしれない。鮫島は、腕っ節が強く、僕でさえ彼には勝てない。そう言う内面的怖さが何処かで内在していた事に僕は仕方なく従っていたのかも。そう思うと、たとえ冴子が間違っていた、正しかったそんな事はどうでも良く、僕は自分にとって最適解を選んだだけだ。 鮫島くんがその後、どうなったのかは、僕はよくわからないが、僕は冴子と付き合う事になり、なんの問題もなく関係を続けている。
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