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「はい! ちょっと遅れた原稿があって、張りついてたらこんな時間に。あ、やだ。わたし、顔ボロボロですよね。あんまり見ないでください!」
うう、朝日がまぶしい。
化粧のはがれたみっともない素顔を見られたくなくて、わたしは持っていた校正刷りの紙で顔を隠した。
「お疲れ様。俺みたいな面倒な作家がほかにもいるの?」
「いえっ、わたしのスケジューリングがうまく行かなかっただけなんです。それに、神崎先生はちゃんと締切守ってくださるし。全然面倒なんかじゃ」
「ふーん?」
いつも穏やかな彼の笑顔が、なぜか一瞬意地悪く見えた。
目の錯覚かな?
「俺も今度、原稿遅らせてみようかなあ。そうしたら、君が徹夜で張りついてくれるんだよね?」
「……はい?」
神崎さんはあんぐりと口を開けたわたしをおかしそうに見て、少しふざけた口調で言った。
「嘘だよ。そんなこと、しない」
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