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「森川、悪ぃ……」
女子を押した南雲に笑顔を返し
(いやいや、僕的においしい展開だから全然OK!!)
な~んて考えながら
「大丈夫だよ。これからは気を付ければ良いんだから」
と答えた。
この日の僕の対応が「マジ神対応」という噂が立ち、僕はこの事件の後「貧血の森川」から「神対応の森川」になり、変に略されて「神川(もはや別の名前)」と呼ばれるようになる。
「森川!あんた、階段で落ち掛けたって本当?」
さすが早耳の和田だ。
教室に戻ると、和田が文字通り飛んで来た。
「大丈夫だよ。支倉先輩が助けてくれたから、何処も怪我していないし。騒ぐと先生にバレちゃうから、シー」
と人差し指を口元に当てて言うと、和田は不満そうに口を1文字にしている。
「ほら!そんな顔しないの。可愛い顔が台無しだよ」
両頬を摘み左右に引っ張って言うと、和田が真っ赤な顔で僕の手を叩き落とすと
「もう!本当に心配したんだからね!」
とプリプリ怒っている。
「それより聞いてくれよ。階段から落ち掛けた僕を、支倉先輩が救世主のように助けてくれたんだ……。むしろラッキーハプニングだよ!」
両手を祈るようなポーズにして言うと、今度は和田が僕の両頬を摘んで左右に引っ張った。
「ひひゃいよ~(痛いよ~)」
と言うと、和田は
「支倉先輩、支倉先輩って!馬鹿じゃないの!」
って叫ぶと、怒って何処かに行ってしまった。
僕は引っ張られた両頬を撫でながら
「何だ?変な奴」
と呟いて、自分の席に戻って窓の外を眺める。
すると、ちょうど支倉先輩が生徒会の人達と渡り廊下を歩いているのが目に入った。
(あぁ……楽しそうに笑う支倉先輩の笑顔、癒される~)
そんな事を考えていると、頭を教科書でポコっと叩かれた。
見上げると、幼馴染みの鈴木龍之介が立っている。
「お前……本当に……」
呆れた顔をされて疑問の視線を向けると
「和田、お前の事が好きなんだからさ……。支倉先輩に憧れてるのは分かるけど、もう少し和田の気持ちを考えて上げれば?」
そう言われて目が点になる。
「はぁ?」
思わず変な声が出た。
「いやいやいやいや!和田は中林先輩が好きだから、僕なんか眼中に無いだろう?」
笑って反論する僕に、龍之介は呆れた顔を益々呆れさせて
「あのな、憧れは憧れ。好きとは違うだろうが!」
そう言われて首を傾げる。
そんな僕に龍之介は頭を抱えて
「じゃあ何?お前、憧れの支倉先輩と手を繋いだりキスしたりしたいわけ?」
と聞かれて、ちょうど先日購入したBL漫画のワンシーンを妄想してみた。
自分の気持ちに中々気付かない受け。
それを先輩の攻めが、受けの気持ちに整理が着くまで待っていた。
やっとお互いの思いが重なり合い……
『森川、ずっとずっとお前が好きだった』
優しく頬に触れられ、ドキリと胸を高鳴らせる受け。
『支倉先輩……僕も……先輩が好きです』
瞳をうるませ、攻めを見上げる受け。
ゆっくりと攻めの顔が近付き、唇が重なる。
「良いっ!ナイスシチュエーション!!」
自分の妄想に思わず叫ぶと、龍之介は呆れきった顔をして
「お前……本当にブレないな」
って呟いた。
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