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放課後、ぼ〜としながら階段掃除をしていると、他の奴等が雑巾丸めてホウキと雑巾でアイスホッケーの真似事をして遊んでいた。
「もう!ちゃんと掃除してよ!」
同じ掃除のグループの女子が、遊んでいる奴等に叫んだ時だった。
「うるせ〜んだよ!」
と、一人が女子の肩を軽く押したつもりだったんだろう。
でも、その女子がバランスを崩して僕の方によろけて来た。
「危ない!」
って、その子の身体を支えたつもりが、思ったより反動が強くて僕の身体がふわりと浮いた。
(マジかよ!!)
そう思った時だった。
「森川!」
と、僕の名前を叫ぶ支倉先輩の声を聞いたような気がした。
誰かに抱き留められ、大きな手が手すりを掴んで半円を描いて手すりの壁で制止した。
周りがホッと息を吐いた瞬間、背後から抱き締められた状態で
「バカヤロウ!階段で悪ふざけするな!俺が通らなかったら、森川は大怪我していたぞ!」
そう叫ぶと、ゆっくり手を離して
「森川、大丈夫か?怪我は無いか?」
って、俺の頭を優しく撫でた。
「はい、大丈夫です。ありがとうございます」
ドキドキと高鳴る心臓を押さえ、ぺこりとお辞儀をすると
「女子を守って、偉かったな」
と言いながら頭をぽんぽんすると優しく微笑んだ。
そしてゆっくりと階段を上り、僕が助けた女子に
「どいつ?きみを押したバカ」
そう言って、目を据わらせた。
女子が困ったように顔を見合わせていると、遊んでいた奴等に近付き
「誰?自分で名乗り出られるよね?」
そう言ってめちゃくちゃ怒っている。
でも、どいつも俯いて何も言わないでいると、先輩は深い溜息を吐くと
「じゃあ、全員生徒手帳出して。名乗り出ないなら、連帯責任だから」
と、マジギレしている。
僕は慌てて走り寄り
「先輩!コイツらも反省していますし、僕も女子も怪我をしないで無事だったので、許してもらえませんか?」
と頭を下げた。
先輩は僕の姿を見て、大きな溜め息を吐くと
「二度目は無いからね」
そう言い残して階段を上って行った。
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