もうひとつの遺体

13/21
23人が本棚に入れています
本棚に追加
/243ページ
「いいじゃない。瑠香だって暇そうにしているし」 「おばあちゃんにわかるの? いつも外出しているのに」 「わかるわよ。ソファーが同じ形でへこんでいるから」  由依は、自分が言ったことが面白かったのか、ウフフと笑った。 「まったく……」  どこかに連れて行けなんて言うんじゃないわよ。……瑠香は、そう念を込めて大吾を睨みつける。彼は、祖母に逃げ道を求めた。 「おばあちゃんは、いつもどこに出かけているの?」  由依は「んー」と間をおいてから「あちこち、色々な場所よ」と答えた。 「徘徊しているんじゃないよな?」  ストライカーの丈治は怖いもの知らず。遠慮がなかった。 「安心しなさい。頭はまだしっかりしているわ」 「みんなそう言うんだよ」  彼がそう言って笑う。つられて瑠香も笑いかけた。それを中断したのは、由依の眉間にシワが寄っていたからだ。 「丈治、年寄りを馬鹿にするものじゃないよ。歳をとったって、図書館や公民館、ショッピングモール……、行く場所はいくらでもあるのよ」 「おばあちゃん。明日、一緒に行ってもいい?」  暇つぶしなのか、由依の日常に好奇心を覚えたのか、大吾が身を乗り出す。
/243ページ

最初のコメントを投稿しよう!