もうひとつの遺体

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 大吾が祖母と一緒に行動するのは大歓迎だ。そうなれば瑠香が涼しいリビングを独占できる。 「つまらないとか、すぐに帰りたいということになるわよ」  由依は、容易に「うん」と言わなかった。瑠香は最後まで話を聞きたかったが、ダイニング丸の仕事があるので食卓を離れた。  その結果がわかったのは翌日だった。朝食後、いつもならタブレットをいじりはじめる大吾が部屋に戻って着替えてきた。 「ルカ姉は行かないの?」 「午睡をしないと、夜が持たないわ」 「伯母さんは、午睡なんてしてないよ」  彼が嫌味を言った。 「お母さんは特別なのよ」 「特別? おばあちゃんだって、してないよ」 「嫁はね、姑に似てくるの」 「ああ、そういうこと」  大人同様に嫌味な中学生は、大人同様の理解力を持っていた。  2人が午睡論争をしているうちに由依が顔を見せ、「準備はいいの?」と大吾に訊いた。 「準備は万端です」  彼は直立不動の姿勢を取った。まるで軍人のように敬礼をしそうな勢いだ。外出先で何かねだるつもりだろう、と彼の意図を推理した。
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