フォロワー

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 あっという間に、老人がミルクに馬乗りになっていた。  ――ゴクリ……、のどが鳴る。この先どうなるのだろう?……見たいという好奇心とミルクを奪われたくないという嫉妬で胸が張り裂けそうだった。助けてヒーローになりたいという願望と、尾行していた後ろめたさとが頭の中で葛藤していた。  猛獣のように他人を襲う人間をドラマやゲーム以外で見るのは初めてだった。もちろん自分自身、喧嘩をしたことなど一度もなかった。格闘競技の経験もない。  ――パン!――  闇夜に破裂音が木霊した。老人がミルクを打ったのだ。フォロワーは思わず自分の頰を抑えた。自分が打たれたような気持だった。  あいつめ……。老人に対する怒りはあったが、闇雲に飛び出す勇気はなかった。何よりも自分の非力さをよく知っている。自分に比べたら、あのぼろアパートで目撃した老人は、どれほどたくましく立派な筋肉を持っていたことか……。そうした認識が筋肉を強張らせ、足を地面に釘付けにしていた。ただ月光に照らされた舞台を覗く眼ばかりが、生き生きと活動していた。
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