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俺たちの写真は、フォトコンテストで入賞することは出来なかった。ただ、凛の撮った夕焼け空は審査員を最後まで唸らせたとして、特別賞をもらえた。
写真が校内に掲示されると、たちまち写真部は注目の的となり、放送部や新聞部に取り上げられるまで知名度を上げた。
入賞したら廃部を間逃れるという約束は、達成出来なかったわけだけど、まだ望みは捨てていない。
ガランとした部室で、顧問の教師が頭を抱えてため息をつく。
「お前たちの頑張りは認める。でも、決まりだから、俺にはどうすることも出来ん。あきらめるしかない」
「でも、部員が規定の五人になれば問題ないですよね?」
「あっ、ああ……まあ、そうなんだが、来年まで待つことは出来んぞ」
ガラッとドアが開いて、三人の生徒が顔を見せた。ぽかんと口を開ける顧問に、転部届の紙が差し出される。
俺と凛で、部活を辞めようと考えている知り合いを勧誘した。特別賞の写真のおかげで、部の存在を示せたのが決め手となったらしい。
「どんなに頑張っても、叶わないものは叶わない。だけど、最後に笑うのはあきらめの悪いやつですよ」
部員の増えた写真部は、なんとか存続の息を吹き返した。
新しく入った人たちは、来たり来なかったりと自由にしているけど、何かを言うつもりはない。しばらくしたら、カメラの良さをわかってくれるはずだから。
「なつるー! なにかいい素材持ってない? 美術部の子が表情の参考にほしいんだって」
いつの間にか、凛が人のカメラを操作してデータを見漁っていた。
「だから、勝手に探るなって言ってるだろ。人のスマホを見てると同じだからな」
取り上げるのも面倒だから、最近は釘だけ刺して野放しにしている。
「夏琉の写真って、風景や物ばっかり。なんで人撮らないの?」
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