この冬をレンズに閉じ込めて

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 青南(せいなん)高校では、三十四の部活動があって、そのうち二つは公認されていない同好会。  俺が所属する写真部は、その後者に入る。  五人から正式な部として申請できるのだが、現在の部員は二人。三年が引退して、廃部の危機に晒されているのだ。 「ちょっと、どうしよう! ヤバいよ! わたしたちの居場所がなくなる!」 「(りん)、うるさい。いいから落ち着けって」  小さな部室を右往左往して、焦りを露わにしているのは、写真部の片割れである朝丘凛(あさおかりん)。  それでいて、俺の幼稚園からの幼馴染でもある。 「だって、さっきの先生の話聞いてた? 廃部だって」  綺麗な茶髪を揺らしながら、イスに腰を下ろす俺に顔を近づけた。その必死な目から視線を逸らして、ため息を吐く。 「そんなの、初めからわかってたことだろ。部員だって三年入れてギリギリだったんだし」 「なんでそんな冷静なの? まあ、夏琉(なつる)はいいよね。別にカメラが好きで入ったわけじゃなさそうだし」  少しムッとした声が返ってくる。  一眼レフを触りながら、そうだけど、と心でつぶやいた言葉は、口にしなかった。 「最近、部活も来たり来なかったりだったもんね。どうせ、なくなっても痛くも痒くもないって思ってるんだ。絶対そうだ」  悲観して、ねちねちと発せられる文句にはなにも反応しない。  よくあることだ。悪いことがあると、凛はマイナスに思考が向けられがちになる。
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