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「でも、まだすぐってわけじゃないだろ。ほら、これに入賞したら、とりあえず継続させてもらえるって言ってたじゃん」
高校生フォトコンテストのチラシを見せてすぐ、それは凛によってもぎ取られる。
不満そうに唇を尖らせて、じっとその文字を見つめて。今にも泣き出しそうな声を、振り絞るように。
「ただ……延期ってことでしょ? 来年、新入生が入ってくれなかったら、結局は廃部だよ」
世界の終わりのような顔をして、凛は机に突っ伏した。
ぐすんと鼻をすする音だけが、部室に響く。
小学校高学年の頃から、凛はよく写真を撮っていた。空や花はもちろんのこと、道に落ちている物や近所の人。
なりふりかまわず、あらゆるものを撮り続けて。
高校に入学したら写真部に入るのだと意気込んでいて、なりゆきで俺も入部した。
ずっと生きがいにしてきた趣味が奪われようとしているのだから、落ち込むのも無理もない。
でも、俺は不器用だから、こんな時に気の利いた言葉などかけられなくて。
「じゃあ、あきらめるでいい?」
最悪な選択をしてしまう。いつも、あとで後悔する。
そっと置いた一眼レフに、伏せたままの手が伸びてきて、真っ赤になった目が俺を向く。
「……まさか。やるよ。写真部、復活させるに決まってるじゃん」
いつも通りの強気な凛に戻って、俺はふっと笑みを浮かべた。
そして、すぐ後悔の波が押し寄せる。
この日から、フォトコンテストへ向けて写真を撮るために、放課後が戦場に駆り出されることとなったのだから。
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