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2話
(大学生のバイトかな?)
幼い顔に仕事人間の表情が気になって作業する姿を眺めていた。少し小柄な彼よりヒールを履いた私の方が身長が高いくらい。積み重なった段ボール箱を降ろして作業用の手袋をはめた手でざっざっと開けては、缶を両手で冷蔵棚に並べていく。ビールの次はジュースのコーナー。
店内に冷房は効いているけど、その額には汗が滲む。あっという間に商品は前を向き整列し、空の段ボールは畳まれている。あまりの手際のよさに見とれてしまった。
職種は違うけれどおそらく彼はこの仕事が好きなんだ、直感的にそう思った。私もそうだ、自分がメイクをすることも人にしてあげることも大好き。「このシリーズいつも使ってるの、新色出るの楽しみ」そう言われることも嬉しい。そして、初めて彼のご両親に会うという女性にお化粧をして「自分に自信がついた」と言ってくれたのも誇らしかった。
あの後コフレを手にしたお客様が飛び上がるようにしていたのを見た。郷田さんが私にミスを押し付けたのも許せないけど「もう手に入らないと思った」とお客様が泣きそうだったのは申し訳なかった。
大抵は限定と言っても破損があってもいけないので幾つか余分に取ってあるのだけど、人気のタレントさんの企画商品の今回はそれも残っていなかった。「良かった」そう言って商品を抱きしめて貰えたことを手放しで喜ぶ訳にはいかない……。
ん?作業を終えた彼が私を見て慌てている。えっ何?
『すみません、商品をお待ちでしたか?まだ冷えていませんが……』
えっ、ああ。ここにいたらそう思うよね。
『あ……えっと』
『常温でお持ち帰りですか?』
『え?ええ。その方が好きなので!』
一瞬戸惑った彼が手渡してくれたのはグレープ味の……炭酸!
(ああー、やっちゃった)
『ありがとうございます』
そう笑顔で言われた。
『いえ……』
なんとなく気まずくて、後ろも見ずにセルフレジに向かう。夕食の材料を買ってないことに気づいたのは家に着いてからだった。
一目惚れ、かな?高校の時から付き合った彼と別れたのは仕事を始めて忙しくなったから。時間に余裕が出来てもずっと恋をする気にならなかったのに。
たぶん十歳くらい年下だよ?相手にされるはずないのに、バカじゃないの私。……ううん、まだ恋が出来る自分を褒めてあげたい。彼が手にした炭酸(軍手越しだけど)を見て思った。
(恋はするものじゃない、落ちるものだって。うまいこと言うな……)
以来私は何か嫌なことがあったり(なっかたり)する度に彼を見に行く毎日(!?)なのです。
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