おめでたくない村

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明久は家に帰る。 すると桃奈が身体を抱えて小さくなっている。 「…桃奈!桃奈!!」 「…明久…私おかしいのかなぁ?」 泣きじゃくる、そしてお腹を擦りながらつぶやく。 「なんか、どこからともなく『おめでとう』が聞こえる気がする。しかも大きくなってるし、お腹の中に…。」  明久は宮下さんの姿を、そして今日の様子を頭に浮かべて桃奈の手を取る。 「えっ?何!?」  「逃げるぞ!この村の呪いだ!」  「で、でも!」  「逃げるぞ!!」 明久は桃奈の手を引いて外に出る。 すると宮下さんがさっきや他の人が家の前に。 「無駄だ。『御目出』の呪いはあんたの子どもの目を取って終わる。村の外に行ってもな。」  宮下さんの言葉に二人は足を止める。 どこからともなく、 『オメデ…オメデ… ヒイ…フウ…ミイ……………ヤ…モウスグ…トウ。』  響く深い声が。 「目を差し出せば終わるんだ。悪い話じゃない。あんたの子どもは村を救った英雄さ。」 そこまで言ったとき、明久は飛び出した。 そして宮下さんの鎌を手に掴む。 「何だ!?このっ!」 宮下さんは一振りすると明久の目を斬りつけた。 「あなた!!」 桃奈の悲鳴。しかし明久は止まらない。 そして鎌を奪い取った。 「待て…俺を殺しても止まらん!」 「…いいや!『御目出…十』は 俺の目一つと あんたの残りの目一つで完成だ!」 明久は躊躇いを消してそのかまを宮下さんの目に突き刺した。 「あがああぁっ!あああああぁひいいぃ!」 転がる宮下さん。周囲のアスファルトは血に染まる。 『…御目出…十…。』 「!!?」 どこからか声がした。その時明久も切られた目の方が激しく痛みだした。 「うあああぁああっ!」 「あなた!明久!!」 夜に二人の男性の悲鳴が響き、やがて救急車がかけつた。
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