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ようやく喝采が鎮み、高倉夫婦はゆっくりと外の村民たちの所へ。
「あの~、宮下さん?」
「んお?何だ?」
「…何故、あんな…その…。」
明久が言葉に詰まっていると宮下さんはふと桃奈のお腹を見た。そして
「…そうだ、みんな聞いてくれ!高倉さんの奥さん、今度子どもが産まれるらしいんだ。」
「お子さん!?そうなの?」
「え、ええ?この間あなたにも言いましたけど。」
桃奈も明久も村民の勢いに負けている。
「はい!お子さん!『おめでとう!』!」
「子どもなんて宝だわ!『おめでたい』わよね!ねっ?ねっ?」
突然降り注ぐ禁止の賛美。迷いや躊躇のないその声は、二人の心を蝕んでいく。
村民皆の顔が歪んで見える。
いや『おめでとう』を拒絶している自分たちがおかしいのか?
この言葉の呪いは?
高倉夫婦は賛美の声から逃げるようにして家に帰った。
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