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「…しきたり…ですか?」
「んだ。また村に入ったら『おめでとう』って言葉はつかわないんだ。」
年季の入った車には畑で使うような長靴や軍手も一緒に乗せられている。
「しかし、若いのによくこの村に住もうと思ったなぁ。高倉さん家が立つときはみんな見に来てたよ。」
運転手は片目に眼帯をしたみや宮下さん。ここの村というかのお兄さん的なポジションで越してきた高倉夫婦を村のみんなに挨拶をするのに同行してくれた。お兄さんと言ってももう70歳だが。
「いいえ、ここは皆さんいい人で自然もきれいなので。」
「ははは、高倉さんみたいな若い夫婦は歓迎さ。この間はスマートフォンも教えてもらって助かったよ。わしゃ、ああいうショップは苦手だ。」
車は坂道を進み綺麗な新しい家の前で止まる。
「まぁ、難しい事を考える必要はない。これからもよろしく。」
宮下さんの車を高倉夫婦は降りた。
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