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その4-2
閑話休題。
宮さまに子猫の如く懐かれたい東宮さま。毛を逆立てて、猫パンチしそうな宮さまの様子もお構い無し。
う~ん、これは宮さまに同情すべきか.......と悩んでいるところに、パタパタと可愛い足音が接近。
「みっちゃん、いるの~?」
ひょこっと顔を覗かせたのは、髻も可愛い六歳くらいの、これまた美少年。
「はい、親王さま。ご機嫌うるわしゅう......」
にっこり笑って、軽く頭を下げれば、ととと......と走ってきてガッシリ宮さまに抱きつく童子。
「これ幸仁、はしたない」
「父君さまばっかり、みっちゃんを独占してズルいです」
窘める東宮さまにイーッてしながら、なおも宮さまにぎゅうぎゅう抱きつくこの童子は、東宮さまの御子、幸仁親王さま。やっぱり未来の天皇にお成りあそばすお方。愛情表現過多はたぶん親譲り。
「今日は喬望を紹介するために呼んだのだ。......あちらでおとなしくしていなさい」
東宮さまに再び口を尖らせる親王さま。
「イヤです。みっちゃんは私のお嫁さんなんですから。ねっ?」
見上げられた宮さま、またか......とちょっとばかり口をへの字に曲げて諭す。
「ですから、私も男ですからお嫁さんにはなれませんて.......それに私は鬼退治に行かねばなりません」
出た、鬼退治。首を傾げる親王さま。
「鬼退治?」
「そうです」
「鬼って強いの?」
「さぁ.......」
と惚ける宮さまに代わってお答えいたしましょう。
「うんと強いですよ。だから鬼に食べられないように、お部屋に隠れていましょうね」
「わかった......」
こっくり頷く美少年の後ろで女官が、ほっとした表情、ついでににっこり。
「喬望さま、女御さまが、お顔を見たがっておいでです。お話が済みましたら、弘微殿へお立ち寄りください」
忘れてました。鬼、いました。弘微殿の女御さま。一気に青ざめる俺でした。
「水くさいですよ、喬望。顔も見せずに......」
「女御さま、これは大変失礼を......」
「人払いしたんだから、お姉ちゃんと呼びなさい。お姉さんと........」
「は、はぁ.......」
ひたすら平伏する俺。そう、東宮さまの正室、弘微殿の女御さまは俺の同腹の姉です。東宮さまは義理の兄弟。
「まったく貴方はまともに出仕もしないで......」
「いや、しかし兄上達が......」
「そういう問題じゃありません!」
兄上達は母親違い、女御さま的には俺に出世をさせたいらしい。けど、俺はそんな気無いもん。平和にまた~り生きたいの。
散々、説教されて門のあたりまで来たら、先に御前を退出したみっちゃんが、何気に左近の桜に蹴りを入れてた。
わかるわ、その気持ち.....。
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