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「やめ、」
抵抗するも元々『飢え』が溜まりきっていた体だ。
大したこともできずに押さえられてしまう。
「男だぞ」
分かっているのか、と聞くと、
「気付いてないんですか? 貴方、今物凄い色香ですけど」
(は?)
「確かに容姿は平凡に見えますけど、あいつの魔力を受けているのと」
手が一番触られたくない箇所へ触れた。
とたん、体が弓なりになり声が上がる。
(なっ、)
「男性は興味がなかったんですが、今の貴方なら余裕ですね」
(いや、だ)
その間にも体をまさぐられ、予期しない反応を示してしまう。
「凄いな。もし人に戻れたら側におきたい位ですよ」
(我が君……)
思うままにならない体を呪う脳裏に我が主との会話が蘇った。
『そろそろ名を呼んでもよいのだぞ』
確かに我が主は名を教えてくれた。
一度目とニ度目。
今主が言っているのはニ度目に会った時のことで。
言ってしまったら初めて会った時のことがなかったことになってしまう。
そんな意地が勝り、俺は今日まで名を呼ぶことができなかった。
(だけど)
もっと早く言っておけばよかったかもしれない。
固い地面に押し倒され、一瞬頭が冷えたその時俺の口から言葉が漏れた。
「……ノイシュ」
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