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「我のものに手を出そうとしたのはお前か」
気が付いたときには体へ掛かっていた重みがなくなっていて。
「……やはり生きていましたか。しぶといですね」
何故かかなり離れたところから退魔師の声が聞こえた。
(何が……)
衝撃音がしたのは覚えている。
だが状況を把握する間もなく俺は抱き上げられた。
「やっと言ったな」
ご機嫌な我が主の顔が迫ってきて俺は仰け反ろうとしたが、できなかった。
「不満か?」
明らかに不興を買ってしまったようだが、今の体の状態にこれはよくない。
「降ろし……」
「よくここが分かったものだな」
「退魔師を甘くみないでほしいですね。伝手はあるんですよ。あんたこそ、よくあの毒から生き延びたものですね」
ほっとしたとたん、再び体がおかしくなってきた俺としては降ろしてほしかったのだが、何やら始まってしまった。
(え、毒って)
「あの程度是非もない、と言えればいいのだがな。復活するのに手間が掛かったぞ」
「よかった。じゃないとミレイ達の犠牲が無駄になる」
(え?)
退魔師が何か仕掛けようとしたらしい。
だがそれが何なのか俺は見ることができなかった。
「捕まっていろ」
そう告げると我が主が一気に跳躍したのだ。
「卑怯なっ!!」
「決闘と称して毒を用いる輩に言われたくないなっ!!」
木々の梢を蹴りながらそう返し、俺を抱いたまま跳躍を繰り返す我が主はやはり人ではない。
だけど。
「どこか痛むか」
追手を巻いての休息中、心配そうに聞かれ俺は首を振った。
(俺は貴方を……)
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