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闇に生きる者は当然昼間は活動を止める。
『我が主』もその例に漏れず、陽が辺りを染める頃には地下に特別に設えた部屋で眠りにつく。
(やっぱり……)
分かってはいたが、誰もいない寝台にひとり残されるのは辛かった。
寝台から体を起こそうとすると体の奥が甘く疼き、思わず敷布を握りしめた。
行為の名残りに悩まされるのもいつものことなのだが。
(慣れない……)
甘噛みされた箇所から昨夜の記憶が蘇り、体を動かすのに暫くかかった。
そうやってようやく身を起こすと、後始末がほとんど終わっていることに気付かされる。
(あの人形達か……)
この館は広い。
幾ら俺が我が主から力を分けて貰っているとはいえ、ひとりで全てを切り盛りするのは不可能だ。
等身大のそれらは木や布で作られ、そこに我が主の魔力を加えて完成となる。
一見しただけでは人間と大差ない人形は我が主の魔力にしか反応しない。
(だから俺も魔力を分けて貰ったんだが)
再び夜の行為を思い返してしまい、体が反応してしまう。
(落ち着け、俺)
魔力を分けて貰うには何通りか方法があるらしいが、我が主は『この方が効率的だ』とそれ以外の方法を試してくれなかった。
前述したように彼らの食事は人間の血なのだが、噛みつかれた側の人間は酷い『飢餓』状態になる。
おもに夜の方面での。
恐らく彼らの牙か唾液に媚薬に似た成分でも含まれているのだろうが、ただの村人だった俺にはその辺りはさっぱりだ。
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