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あの館は我が主の魔力が籠められており、燃えるなんて有り得なかった。
(まさか)
その時、人の気配がした。
「本当にできるなんてなぁ」
「ああ。あんな顔で凄腕の退魔師、って言われてもな、って思ったけどな」
反射的に身を潜めた俺の耳に更に有り得ない声が届いた。
「油断しないで下さい。相手はあの吸血鬼の惣領なんですよ」
男達を纏めていたのは、あの少年だった。
(え?)
「三年前に倒したと思ったのに、再び見えることになるとは思いませんでしたが」
(は?)
彼らが立ち去ってから俺はゆっくり立ち上がった。
(何だ今の? 三年前に倒したって……)
頭の中が上手く纏まらない。
「やはり、居ましたね」
落ち着いた声に振り返ると先ほど去ったと思った少年……退魔師がいた。
「なん、で」
「あいつの魔力はすぐに分かりますから」
それにしても、と言いながら近付かれ、俺は一歩下がった。
「あいつがまだ一人しか手を出していないとは驚きですね。しかも」
退魔師の投げた小刀が頬を掠めた。
(早い)
その一瞬の隙に間合いを詰められ、伝い落ちる血を拭われた。
「まだ眷族にしていないとは」
最初に会った時とは全く違う自信に満ちた態度。
「さて」
捕食者の瞳が俺を見た。
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