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カーナビから流れるラジオが、無言の車内に寂しく響く。
「そろそろ家に入らせて。和也も明日仕事でしょ? 早く帰りなよ」
「そっか……分かった。よし送るよ」
「すぐそこだよ!」
二人の笑い声が重なった。
キーを捻りエンジン音が消える。
「あっ」
直後、私の体が和也の湿った胸に吸い寄せられた。
「ふわぁ……はぁ」
自分でも理解に苦しむ鳴き声を発しつつも、そのまま身を委ねた。
しばらくの時を経て、私に絡みついていた腕が離れた。解放された? と油断していたらマスクを剥ぎ取られた。
「家の前だよ……?」
「関係ない」
和也の唇が、私の唇に覆い被さった。甘くて爽やかで、とても落ち着く匂い。
息遣いを全身で受け止めながら、彼の背中にそっと腕を回した。
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