9人が本棚に入れています
本棚に追加
逃げなきゃ轢かれる立ち上がろうにも、体に力が入らない。
あぁ、ここで死ぬの……い、嫌だ。死にたくない。
イモムシのように車から這い出す。ガラス片が頬に突き刺さる。サイドミラーには、涙と血にまみれた無様な自分が映っていた。
駄目だ。もう間に合わない。死ぬ瞬間は、暗闇の中で……目を瞑り頭に両手を乗せた。
「美奈子……」
生きることを諦めた私の体が宙に浮いた。温かいぬくもりと心地よい声が、私の脳内へ響いた。
いつまでも……いつまでも……。
最初のコメントを投稿しよう!