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「美奈子……」
和也の右手が包帯まみれの後頭部に触れる。
「これがラストチャンスだと思って言う。結婚しよう……」
「和也……ごめんね」
「美奈子……」
水を打ったように、静寂が病室を支配する。
「私の気持ちは、やっぱり変わらなかった」
「そうか……」
手が離れた。下を向き歯を食いしばる和也。ナマケモノにも捕まりそうな程に隙だらけ。ゆっくりと身を起こし、愛おしい胸板に顔を押し付けた。
「み、美奈子?」
「私の和也に対する好きは……全然変化してないよ」
「だから、つまりそれは、俺のことを男としては……」
「大好き!」
彼の言葉を唇で遮った。
やっと気がついた。私は最初から、和也にラブだったんだ。
なにを話せばいいのか分からなくて緊張したり、和也を失うことが怖いと思ったり、和也の成功が自分のことみたいに嬉しかったり。
とっくの昔から、和也のこと愛していたんだ。
「ゴホン……おめでとう」
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