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「シート濡れるよ?」
「き、気にしないでよ」
ポーチを後部座席に放り投げ、和也に手招きをする。本音ではこのままお帰り願いたい。和也の顔を見る度に、胸が張り裂けそうになる。
「……それじゃ、お邪魔するよ」
和也により助手席のドアが開かれた。ひんやり……そして重い空気が、車内に流れ込んできた。
「今日はずっと小説を書いてると思ってた」
和也は小説家を目指している。私とデートをする時間を除いては、ひたすら机に向けペンを走らせている。
「さっき言ったように、今日渡したかったから」
「そうなんだ……なんだかごめんね。私が執筆の邪魔しちゃったみた……あっ!」
和也の胸に抱き寄せられた。反射的に瞳が閉じられる。
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