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「美奈子。愛してるよ」  彼の温かい手が頭に触れた。寒空で見つけた温泉に飛び込んだかのように、身も心もほんのりと落ち着く。  ずっとこうしていられたら幸せかもしれないけど、それは許されない。和也に対して失礼だから。  瞳を開ける。和也の唇が迫ってきていた。お互いの唇と唇が交わりそうになる……。 「和也……」 「どうした美奈子?」 「あの……なんでもない」  土壇場で吹き込んできた臆病な風。流されそうになる私の体を、和也は優しく支える。 「無理にとは言わないけど、言いたいことは吐き出した方が楽になるかもしれないよ。お互いさ」  不安の色が塗られた瞳を見せながら、優しく微笑んでくれる和也に、罪悪感が濁流のように押し寄せてくる。  和也は逃げずに向き合ってくれている。答えなきゃ。雨の匂いが漂うジャンパーに視線を落とし、口を開いた。
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