ワケのわからんマイナーなインディーズバンドのアナログ盤について語ってくれ。

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「『LEMONADE BASE』のレコードが出る!」 と、興奮した様子で俺の部屋に殴り込んで来た親友は、片手にぶら下げていた大量のミカンが入ったビニール袋をウチの炬燵の上に放り投げる。手土産だろう。 「なんすか。それ。」 「よくぞ聞いてくれた! 『Green Tea』はサボンはドリオア州出身の4ピースバンド『LEMONADE BASE』がイチキューキューロクに混沌とした世の中にぶち込んだ1stアルバムで、バンドを率いるDJーdiosmとposcaの超絶技巧のベースとギター、そこに絡む端岡mowmowの超甘メロヴォーカルに、なんかよくわからないナンセンスなにぎやかし担当のチンドンヤが踊り狂うラヴソングで一曲目から耳の早いリスナーの心を鷲掴みしたかと思うと、続く二曲目から立て続けにヒップホップやらレゲェやら引き出しの多さをこれでもかと見せつけ、本当にインディーズバンドの一枚目かと疑う程だがそんな余地も余裕も持たせず、5曲目のメンバー自ら作詞したというバラード曲で芸術的詩的センスまで脳髄に叩きつけられた我々が立ち直る間もなく12曲目にボートラとして付与されたインストで再び待った無しの楽器演奏テクニックでトドメを刺した伝説的一枚! とんでもなくマイナーなインディーズレーベルから出ている上にとっくの昔に廃盤なり、コレクターの間では数十万で取引されていたものが、この度満を持して重量盤で帰ってくるんだ。我々はただ紙ジャケから取り出したその奇跡の一枚をターンテーブルに乗せるも良し、そのまま指先で持って立ち尽くすも良し、好きな方法で楽しむことができるんだよ、すごいことだと思わないか!?」 などと言われて意味がわからないが、彼が寒波の中それを言う為だけに俺の部屋まで走って来たおかげで、ミカンがよく冷えていて美味いということだけは要領を得た。 「興奮してるお前が可愛いから、そのレモネード某は神か。」 「神なんだよ! 壊滅的に生産数が少ない希少盤故にネット予約をするから回線搾取する間ここに置いてくれ!」 「好きにして。」
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