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夏田よりご挨拶:ペチカと、表紙の話
お読みいただきまして、誠にありがとうございます。
これは明治時代を舞台にして、音楽学校の同級生ふたりの恋と執着を描いたお話です。雪のように、あっという間に消えていくものとともに現れる天才音楽家の魂、幻想…みたいなものを少しえっちなボーイズラブとして書きたいなぁと思って書きました。
本作で、貴船さんが「暖炉の火を、変ホ長調。四分の四拍子で。調和のとれた全(まった)き幸せ」と言ってるのは、童謡「ペチカ」をイメージしています。
北原白秋の歌詞&山田耕筰の音楽による「ペチカ」は大正時代の童謡なので、このお話よりもう少し時代があとなのですが、イメージとしてお借りしました。素朴な童謡であるのにどことなくロマンの香りがしてたまらない。
専門的な楽曲分析はできないですけども、変ホ長調という調性のイメージは「耽美」とも言われていたり(楽譜を見るとフラットが3個ついててオッシャレ)、「ペチカ」は終わりの音が「属音」なのも特徴です(すみません、難しい話はうまく説明できん)。「主音」で終わると「ああ、終わった~」という感じがするところを、「属音」で終わることで、まだ先に続くようなふしぎなフワフワした感じになります。
それから表紙の作品は、川瀬巴水の版画作品をお借りしました。
雪のこまかい描写、素敵じゃないですか?
蛇の目の傘(女性だけど)、家々に灯るあかり、そしてよく見ると、道の先で誰か待ってる……というのも…好き…下に画像を載せておきます。
最後に…
本作のシリーズ作品(とか書くと作家っぽいな…)に、夏田が初めて書いた「春林奇譚」という掌編があります。
こちらも近々、エブリスタにお引越しさせてもらうつもりです…。
わたしの書くものは、人気のBL・王道のBLっぽくなくてアレですけども…あなた様のお目に留まることができて幸せものです。
おつきあいいただきまして、本当にありがとうございました。
夏田樹
◆川瀬巴水 「双作版画會 代地の雪」 (1925)
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