はじまり

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時同じく。 「そんなんだから、だめなのよっ!」 学園の廊下から、甲高い声がしていた。 「あなた、狩る者としての自覚がないの?」 「いや……俺は巻き込まれて、つい、流されただけで」 「一度やったことくらい、最後まで貫きなさい!」 黒い髪の、衣服まで黒い男は、ツインテールの少女にたじたじだった。 「しかし……」 「叩いたものは叩ききれっていうのよ! あんた、トラウマ? 自分で切りつけて、それを自分から怖がってるんじゃ、狩りなんてやってけない。恥ずかしくない?」 「しかし……」 怒りが収まらない少女は、ぶん、と大剣を振り回した。 「そういう、やっぱ違ったわ、って引っ込めかた、武器に失礼なの! あなたのために犠牲になった時間は? 武器だって、使わなくて良いタイミングで傷をつけて、もうすこし、壊れるまではあったのにあなたが早めて……」 「武器に心などない」 「あぁん? もう一度言えや」 急に口調が変わったので、男がさらに緊張した顔になる。 「……だから、武器に」 「無い? でも、無いからって言い訳になる? そんな気持ちで刃を握るやつなんて、信じらんないわ! そのうち『はずみで殺した』とか言うわね、絶対よ!」 彼女は、目の前の男へとぴし、と指をさした。 時間というやつは決まっている。 それを大事にせず、判断した目の前の男――――なんと、純血を狩るための追跡途中であっさり引いてきたというのだ。 『相手は幼い少女で、可哀想だから』 それが、彼女には許せなかった。 敵というのは、情けをかけないもののはず…… 戦うという立場にありながら、易々と同情するやつがいてたまるか。 「『家族がみんな死んでて……俺は知らなくて』 とか、言っていたわね」 男を追い払うようにして、腹立たしい気持ちで大剣を背負い直すと、先へと進む。 『知らないからやめた』なんて、どこの甘ちゃんだろう。 そんなこと、五万とある。相手が事情があろうと一度決めたのなら、狩る。 それが努めなのに。 「過ちだろうが、なんだろうが、運命は避けられない。どんな事情であれ、敵になったのなら敵なの……どうしてわからないのかしら」
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