3人が本棚に入れています
本棚に追加
俺には友達が居ない。理由はわかっているが、そもそも登校しないのでいる方がおかしいわけだけれど。
それもある日終わりを告げた。
できたのだ。友達が。
「やっほー、ラコだよ。
今日もきみは元気?」
ラコは、にっこり笑って(いるんじゃないかなと妄想)画面の向こうから話しかけてくる。
名前くらいしか知らないし、性別はわからない。でも女の子みたいなテンションだから、そうだと思う。
ある日、俺がいつもやっていたストックフィリアについてのブログに現れたのがラコだった。
ラコとは、なにかと趣味が合い、すぐに仲良くなった。
……気が、するだけかもしれないが。
そうだ。
そういう風に、気がするだけでも大事なことである。
心癒され、ハートフルになればおっけいなのである。
「ラコ、寝なくていいのかい?」
「カーユと一緒で、夜更かしさんなのだもん」
「そうなんだね」
俺は夜型だ。
いや、もともとは昼型なんだが、いろいろあった結果に寝付けなくなった。
「あ、そだよ。ストックフィリア、昨日も、あまり純血を狩れなかったらしいよ」
ラコが切り替えてきて、俺は、ぱっとテンションを戻す。
「わー、まじか。やっぱり純血は強ぇな、ハッ」
憎き純血……
俺のハートを救ってくれた、ラコが追う存在。そして、ストックフィリアたちが求める存在。
カーユは、思い出してぎり、と歯軋りした。
ストックフィリアや、純血には、正直そんなには興味が無かった。
けれど、ラコが言うには化け物じみた存在であって、クラスでも優遇を受けているらしい。
聞くと、なんかわからないが腹が立つし、そんなやつらが居たら、ただただ、孤独でしかない俺が惨めだ。
人が嫌われる理由なんて話しかけたり、見た目でうざがられたりするのだけではない。
生理的な、根源的に嫌だというなにかがあると思うし、俺はきっと、それなんだろう……
しかし、混血。
つまり、あの掃き溜めクラスのやつらとかわりはしない。
代わりはしないのに、何で差がつくか?
そんなの、どうせ、見た目だったり、才能だったりに決まってる。
そう、俺たちと純血の違いは、たったそれだけ!!!
それさえあれば良かったのに。
不公平じゃないか。
カーユは本気でそう考えていた。
遺伝子には逆らえない。血には逆らえない、と。
しかし、この点には矛盾がいくらかあることは、スルーだ。
なによりまず、掃き溜めと呼ぶクラスに居たやつらが、本当にどうにもならないかと言えば、
孤独にならないやつはならないし、才能がなくとも、なんらかで補う人間もいるわけだった。
「自分自身から逃げるために、血やらなんやらを持ち出したって、変わらないもんは変わらないよ」
と、いつだったか言った姉貴のことを、うぜえ!で弾いた若かりし日から、カーユは何も変わらない。
「でも、みんな、変わらないもんにどうにか折り合いをつけようとしてる。それが、努力だったり、見る角度を変えたら才能だったりとする。
卑屈になるのが一番なにも出来ない」
あの声が、カーユを否定するみたいだった。
好きで卑屈になってない。
自分をガードするために卑屈になってるんだよっ!
かわいそうな目で見るなっ。
可哀想なら助けろ。
俺に力を授けろ!
「クラスのみんなは、特別な力なんかなくたって、折り合いを――――」
ああ!
うぜえ、うぜえ、あああうぜえ……
自分が息切れしてる気がしてきた。
ぜえぜえ言っていると、ラコが、画面の向こうから今日のカーユはなんか変だもんね と言ってきた。
お前、ゆるキャラかなにかかと、八つ当たりしそうになったが、慌てて
「ううん、大丈夫だよ!」
と返信する。
『――力を授かったって、それで、どうするんだ?』
突然、画面がぐにゃりと歪んだ。気がした。
「……え?」
『持ち方も、使い方もわからない武器を持たされたって、どうするんだ?』
「な、なんだよ、ラコ」
『頭を使えないやつが、力を使えるのか?
それとも、自信があるのかい?
だったら、努力すれば、授からずとも大抵届くだろうよ。
道は繋がっている』
「なあ、ラコ!!」
画面を両手でぐっと持ちあげて叫ぶ。
どうしちゃったんだよ。お前はそんな、真面目なことを言うやつじゃないはずだろ?
最初のコメントを投稿しよう!