所詮彼女は小悪党

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「ええと、アランさん!」  クルリと振り返り男――アランに正面から向き合えば、虚を突かれたのかアランは思わず「はい」と答える。そこにさらに続くクレアの言葉。 「おつとめ、お疲れ様でした!!」  今度こそ堪えきれなかったのだろう、アランは盛大に吹き出した。ゲッハガッハと咳き込みまでするのだから余程の事だ。笑いすぎるのと咳のしすぎで呼吸もままならず、苦しそうに顔を歪めてはいるがそれでもどこか楽しそうにしている。そんな彼の様子をキョトンとした顔でクレアは見つめる、が、その後頭部にケリーの容赦など微塵もない平手が飛んだ。 「おばかーっっっっ!!」 「いっ、……たい! やめてください! 馬鹿になったらどうするんですか!」 「これ以上ならないわよ! むしろ衝撃で頭の回路がちょっとはマシに動くかもしれないでしょ!」 「人を機械みたいに!」 「迷子にならないしへんなの拾ってこないしで機械の方がアンタより数十倍優れてるわ!」 「ひどい!!」 「……ちょ、待って……しぬ……俺の腹筋がしぬ……」  ケリーとしてはいっそトドメを刺したい勢いだ。ヤるなら今か、と口を開くがそれより先に残念ながらアランが動く。 「っ……ああ、ありがとうお嬢さん。あんたみたいな普通の娘さんにそう言ってもらえて嬉しいよ」 「いえ、だって頑張って罪を償ってこられたんですから当然です」 「なあお嬢さん、やっぱり俺はあんたに礼がしたい」 「ええ!? あの、ほんとうに大丈夫ですよ? むしろここまで連れてきてもらったお礼ですし」 「いやいや、風呂と着替えは当然ながら、それ以上に俺なんかに労いの言葉をくれるお嬢さんの優しさに報いたいんだ」 「ちょっと」 「見たところこの屋敷はお嬢さんとそこのメイドの二人だけなんだろう? ここらで一つ男手は必要じゃないか?」 「いらないわよ却下よ不可よ受け取り拒否よ!!」 「必要です! いつもケリーさんに重い荷物を持ってもらったり、高い場所に置いてあるのを取ってもらったりで大変なんです」 「大変なのはアタシなんだけどぉっ!」 「だろ? こう見えて俺はそれなりに力はあるし、そこのメイドより背もあるから何かと役に立つ……ってことでどうだろうお嬢さん、俺を執事として雇ってはみないか?」
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