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しかしまあ、モテる、と言いつつ。
ここは小中高一貫の、男子校、である。ココ大事。
校舎や寮、併設した施設など諸々を大きく囲んで学園の領地は高い柵で囲まれており、外へ出るには外出届けが必要。しかもこの学園は山奥に建てられている。規模のでかい田舎のラブホみたいな立地してんな、と言うと怒られるので言わない。
男ばかりで放り込まれたこの閉鎖空間、多くの野郎は、男でもイケる、などと考え出すのだ。この学園でのゲイ、バイは約八割強。残りの二割にも満たない野郎共は他校に彼女やら小さい頃からの許嫁やらがいるノンケだ。由々しき事態。
高校からこの学園に入学してきた俺は、初めの三日ほどはずっと白目をむいていた記憶がある。しかし、たった一年されど一年、現在ピカピカの高校二年生となった俺は、少しずつこの学園の空気に毒されつつあった。
元々顔が良い奴が多い学園だが、生徒会の彼らは飛び抜けて顔面偏差値が高い。王者オーラ、王子的な微笑み、垂れ流す色気、わんこ要素、魂の片割れ。個性的な美形が粒揃い。
そして彼らのお家はとてつもない金持ちだった。つまりボンボン、生粋の。天は彼らに何物与えれば気が済むのか。
自分の顔は好きな俺だが立場は弁えている。何せ俺は顔以外普通だ。勉強も運動もすべて普通。定期テストは殆どの教科が平均点くらいの点数で、苦手も得意もない。逆にもう誇っていいのかもしれないと思い始めたところである。運動はある程度出来るし足も速い方だが好きなスポーツがあるわけでもなく、まあ普通の男子高校生の活発さといった感じ。
一般家庭にうまれたひとりっ子で、不自由しない程度に暮らせるが金持ちという程ではない。性格だって、みんなに好かれる爽やか君でも、クールな一匹狼でも、心優しい聖母でも、心の広い菩薩でもない。
顔は割と良い俺だが、そんなスペック平凡野郎なのでこの学園ではモテない。これは嬉しい類の事実だけど。世の中顔だと人は言うしあながち間違いでもないが、顔だけではやっていけないのもまた現実だ。
そしてあのアイドル生徒会だが、あるランキングの上位の者が選ばれる。そのランキングこそ、この学園の特異な部分がよく表れていた。
何せ「抱かれたいランキング」「抱きたいランキング」とかいう小中学校あたりの卒業文集のよくわからんゴシップが下ネタ度を上げた感じのランキングで決まるから。ちなみにランキングは30位までで、そこからは圏外となる。
基本両ランキング5位以上の十名の中の数人が生徒会役員、そうじゃなくても大抵何かしらの役職持ち。
ちなみにマイベストフレンド水無瀬は初等部からこの学園に通っているらしい。抱かれたいランキング8位という、トップ10入りを果たした素晴らしい功績を残していらっしゃる。男子校において、という前提がついてるので何も羨ましくないけれど。可哀想に。優しくしてあげよう。
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