5038人が本棚に入れています
本棚に追加
生乾きの制服と鞄を手に、見送ってくれた紀藤に感謝を伝えた。橘にも直接言いたかったが、帰ってくるまで待つと夕方まで待たなければいけないことになるので今度必ず伝えたい。ついでにプリンス摂取する口実にもなる。
次描くときの相談しよ。と言う紀藤と連絡先を交換して、手を振って部屋を後にした。
と言ってもフロアは同じなので、少し歩くと自室に着く。カードキーをかざすと鍵の開く音。ドアを開けると、水無瀬の靴が一足と、見覚えのない靴が二足。
これはいつメン揃ってんね?
「ただいま〜」
「おかえり」
「朱羽! おかえり!」
大牙は何も言わずに軽く片手を上げた。イケメンしか許されない仕草してやがる。
「朱羽、今ゲームしてるんだ! いっしょにしよう!」
「お、いいね。俺とりあえず片付けしてくるわ」
自室に入ると、たった一日振りなのにどこか懐かしさを感じた。荷物を置いてベッドに倒れ込む。共有スペースの家具は基本学園から支給されるのだが、金持ち学園だけあってソファはかなり上質。広く心地良いソファは元々ベッドも小さめの俺にはちょうど良く、寝心地に一切支障はなかった。しかしそれでもベッドへの恋しさは感じてしまったりする。
借りた服は、制服と一緒に学校に備わっているクリーニングを頼むことにした。
ガチャ、とドアが開かれる。起き上がってベッドに座り見ると、水無瀬が立っていた。
「なんか用?」
「特には」
ないんかい。いつでもどこでもクールな男だ。
「そういえば昨日、俺が一旦帰ったときこの部屋誰がいたの?」
「俺と大牙、優、生徒会」
「セイトカイ……」
「全員は揃ってなかったけど」
大量の靴の中にピッカピカの高そうな革靴が数足混ざっていたからもしや、とは思っていたが、つまりあの判断は間違っていなかったわけだ。むしろ天才的な神回避。俺そろそろ橘に菓子折りでも渡した方が良い気がする。
最初のコメントを投稿しよう!