出会いだらけの新歓

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出会いだらけの新歓

「ああ神よ、どうかイベントに立ち会えますように……」 「何この晴天」 新歓、当日。 晴れ渡る青空の下、俺の心はどんより曇天である。 隣でわざとらしく手を組んで祈っている宮本を横目で見た。この男、相変わらずの熱量だ。井槻は風紀委員なので今日は警備の方に当たるらしい。 グラウンドに全校生徒が集合しているとやはり騒々しく、大抵の奴はかなり張り切っているようだった。 「宮本、お前どっちだっけ」 どこからか取り出してきたオペラグラスを左右にと動かしながらチェックしている宮本に、そういえばと声をかける。オペラグラスを目に合わせたままこちらを向いた彼に苦笑した。そろそろかなりシュールで不審なことに気づいて欲しい。 「僕は逃げる。鬼側羨ましいよなぁ、逃げる側は捕まったら即会場に戻らなきゃいけないけど鬼は時間いっぱい自由に動けるじゃん。つまりイベント遭遇率も大幅アップ」 そう、と頷き返す。鬼側か逃げる側かはあらかじめクラス内で伝えられていた。ちなみに俺も逃げます。 役割に従い会場に設置された簡易的な受付でそれぞれリストバンドのようなものを受け取るのだが、デジタルの腕時計のような見た目のそれには液晶が付いており、鬼側には捕まえた人数、逃げる側には捕まったか否かと逃げた時間が示される、というよくわからんがハイテクなヤツ。どこに金使ってんだかと言いたいが、以前からの使い回しなので費用はかからないらしい。 鬼ごっこと言えどこれは戦争だ。走るし転ぶし汚れるし、ジャージ参加。 ゴリムキピチピチ筋肉マンやら、万年半袖半パン野郎やら、萌え袖チワワやら、爽やかスポーツマンやら、オシャレかつシンプルで機能性に溢れたジャージでさえ芋ジャーに変える魔法を持つ陰やら。着こなしは多種多様、十人十色だった。しかし半袖半パン野郎は理解できない。小学生の頃からクラスに一人はいるが、ついにアイツらがジャージを羽織ったとき世界は破滅に一歩近づくのではなかろうか。 キィン、とハウリング。 静まり返った会場、設置された壇上に生徒会役員達が現れる。 途端、叫び声が響き渡った。 きゃーーーっ、やら、うおおおお、やら。相変わらずすごい声援だ。お祭り騒ぎ状態なので、俺もなんとなくわいわい叫んでおいた。 「諸君、本日は天候にも恵まれた——……」 と、始まった会長の挨拶は皆黙って真面目に聞く。良い子。 話が終わった瞬間はやはり拍手喝采。そしてそこからは副会長からのルール説明が始まった。
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