出会いだらけの新歓

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昨年と特に内容は変わらないらしい。 新入生歓迎会という名の親睦会。ほとんどが初等部もしくは中等部からの持ち上がりであるこの学園に、新入生もクソもない。 去年、入学して間もなく学園に馴染みつつあった俺はこの新歓の内容を見て度肝を抜かれた。微妙に苦手意識のあった生徒会を逆に好ましく思うまであった。 だって、鬼ごっこだし。庶民的だし。高校生にもなってこんなにアホっぽい催し物ある? 男子高校生特有のバカ感が滲み出ていて一周回って愛おしかったが、しかし。 上位まで残った奴への報酬。これでまた底辺へと落ちました。プラマイゼロおめでとう。 鬼は捕まえた奴が多いほど上位、逃げる役は制限時間の中で逃げられたタイムが長いほど上位。 鬼、逃げる側、それぞれ5位以内に入った者へは報酬がある。 その報酬というのが、好きな子の時間もらえちゃう券。 憧れのあの子でも密かな思い人でも、なんなら生徒会役員でも。お出かけするもよし、お話しするもよし、一日、相手の時間を貰える券。誰でも指名出来るため、美形になんとかお近づきになりたい人間からすればなんと美味しい話だろうか。というわけで、校内恋愛パラダイスのこの学園では、大抵の生徒が血眼になって挑むのだ。 ぼんやりと前にいる野郎の髪の毛を数えていると、そろそろ開会式が終わるらしい。 生徒会長が再び姿を現す。 スターターピストルを高く持ち上げ、持っていない方の手で耳を押さえた。 「開始!」 パァン、と小気味よい音が鳴り響き、逃げる役の野郎がわらわらと敷地内で散らばっていく。中盤辺りで捕まるか、と決めて、とりあえず中庭を目指した。
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