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「ッ死んでる……!?」
「惜しい、惜しいな。ギャグ路線は良いからそこは『……大丈夫?』って寄り添、痛!!」
いくらか重い音と共に叫び声。
ちら、と隣を見れば机に突っ伏し一々ノートを取り出してダイイングメッセージを書き始めた宮本と、その頭に先程手元のノートアタックを喰らわせた生き返ったイケメン。
「やめろお前、人を妄想に使うな」
「ッックソ、旦那か!」
「キャーッお嫁にもらってー!」
「初夜はいつ頃どんな体位で?」
「やはり顔を見なが、い゛っっ!!」
「悪ノリするな」
ダイイングメッセージ用のノートはインタビュー用に早変わり。表紙に書かれていた「萌えの宝箱♡」とかいうアホみたいな文字には触れない。
ふざけているとこちらには割とソフトなデコピンが飛んできた。優しさ。
基本いつも昼飯を食べ過ぎて死にかけている彼は、井槻葵という。華道の名家にうまれた彼はキューティクルの素晴らしい暗めのグレーの髪と灰青の瞳が素敵でいらっしゃる。はい目の保養、合掌。風紀委員で、たまに委員長ゴシップをくれる。と言うより宮本にしつこく質問されて答えているのを俺は横で聞いている。ビタミンと乳酸菌くらいしか摂取しなさそうな見た目だと偏見を持たれがちだが意外に大食いで、しかし食べたい分を食べたい量摂取すると胃腸がやられるという欠点がある。そのくせ食事の量をセーブしないので、昼休みは大抵虫の息だった。
「傷モノになったら責任とってちょうだいね」
「わかった。というか次、小テストだぞ。お前らちゃんと勉強したんだろうな」
「えっ?」
ド忘れしてた……とお通夜並みに落ち込む。神は俺に味方をしてくれないらしい。
「わかった!? わかったって何!?」と今にも盆踊りを始めそうに大はしゃぎする宮本に、もう一発お見舞いした井槻が前の席に座った。宮本は盆踊りの盆を煩悩の煩と履き違えている節がある気がする。
「ほら、教科書出せ。範囲教えるから」
ジーザス。神はここに居た。
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