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ようやく知人として対応したことを喜んでいるのか、その皺は深い。
「昨日連絡しましたよね?既読がつくの見てました。覚えてないんですか?」
「言い逃げのことかな?」
「逃げたわけじゃ…!」
「じゃあその前の?デートのあと『今日はありがとうございました』と連絡をくれたから『こちらこそ。いろいろ驚かせてごめん』と返した。そしたらすぐ…なんだっけ、『大丈夫です。貴雪さんのまなとですから』だった?」
「や、やめてください!奥には店長もいますから!」
公開処刑か!
このまま、あんな!こんな!まで喋られては困る!
デートの内容まで喋りだしそうな彼の口。
慌てて塞いだ手のひらに唇が触れる。
「あ」
昨日を思い返した一瞬の間にくらった、生命線への口づけ。貴雪さんを見上げた。目尻の皺が一層深まる。
からかわれた!
彼の唇が甘美にやわいことは昨日教わったばかりだ。
どんな感想を持たれただろう。
たとえ貴雪さんにとって施しのようなキスでも、未成年には中毒性が高かった。
「どこか違っていた?」
「そうじゃなくて…そこじゃ、なくて!」
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