爆破予告された文化祭

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爆破予告された文化祭

「ちょっとみんな、大変! うちの学校、爆破予告されたって!」  クラスでいちばん快活な辻村さんが衝撃の一報をもたらしたとき、わたしたち三年一組は学級演劇『オズの魔法使い』の最終リハーサルをしているところだった。  音楽担当のクラスメイトがキーボードで奏でていた弾んだリズムのBGMは、急に割って入った辻村さんの甲高い声によってぴたりと止まり、ここが教室だなんて信じられないほどの澄んだ静寂が一瞬訪れた。  自分と同じ中学生なのに、大人っぽくていつも颯爽としている辻村さんがひとり、柄にもなくあわてふためいているのを、わたしは他人事のように見つめた。  その言葉はあまりに突飛で、非現実的で、意味するところが咄嗟に理解できなかったのだ。  わたしの学校では、十月の第二土曜日は文化祭だ。それを明日に控えた今日は、一日準備日のため授業はない。  クラスの人数分の机と椅子は教室の後ろへ追いやられ、夏休み前にオズの魔法使いをやると多数決で決めて以来、長く続いてきた練習もいよいよ大詰めだった。  大道具係が作り上げたお城の巨大オブジェは力作で、本番を前に、わたしたちを黙って見守っている。  普段は静かに座ってつまらない授業を聞き流しているだけの場所が、即席の練習舞台に変貌し、本番どおりに衣装を身に着けたドロシーやブリキの木こりが、それぞれの立ち位置についていた。  そんな中を前触れもなく襲った突然の事態に、キャストも裏方もだれもが、文化祭前の浮ついた気分を抱えたまま、教室の入り口で仁王立ちするクラスメイトに注目を向けた。
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