タイムリミットは午後三時

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タイムリミットは午後三時

 そんなの作り話の中だけのこと、仮に現実だったとしても、どこか遠い場所でしか起きない出来事だと思っていた。  いっそ予告なしで当日、突然爆破してくれたらよかったのに。小林くんと演奏しながら、爆発して死ぬならば本望だ。  わたしにとって人生最期の記憶に、これ以上美しい場面はないはずなのだから。  と、そこまで考えたところで、理想と現実の乖離(かいり)に絶望するばかりだったわたしは、ひとつ重大なことに気が付いた。  今、まっせんはなんと言った? ――文化祭は中止。犯人がすぐに予告を取り下げないかぎり。  そうだ、予告した犯人が自ら撤回してくれればいいんだ。  逆に言えば、予告がうそであったとしても犯人そのひと以外に、絶対に爆発しないと言い切れる人はいないのだから。 「わかったよ、まっせん。こうなったら爆破予告の犯人を見つけ出して、直接説得するしかないんだ」 「おい、馬鹿なことを考えるなよ。本当に爆弾が仕掛けられている可能性もあるんだぞ」 「じゃあこのまま黙って、文化祭中止を受け入れろって言うの!?」  さっき職員室から漏れ聞こえてきた教頭先生の言葉を思い返す。次の職員会議で最終決定を下すと言っていた。  つまりタイムリミットは、職員会議が始まる午後三時。  それまでに犯人を説き伏せれば、文化祭中止という案は中止にしてもらえるはずだ。もう今のわたしには、それに賭けるしかない。
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