タイムリミットは午後三時

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 しかし、爆破予告犯を見つけるといってもどうやって?  そもそも犯人はなぜ、うちのような有名でもなんでもない、ただの公立中学を爆破予告したんだろう。  文化祭に参加したくない生徒の仕業だろうか。もしくは、学校の近所に住んでいる神経質な人が、文化祭の騒音を嫌がったのか。  犯人の動機や人物像によって、探す場所も説得方法も変わってくる。  午後三時までもう二時間もないのだ。無駄なことをしている余裕などなかった。冷静に考えられず、気が焦る。 「犯人はいったい、どこのだれなの?」 「それがわかったら、おれたちも苦労しねえよ。とにかく危険なことは無しだ。わかったな?」  だめだ、これは押してもどうにもならないときのまっせんだ。ひと夏かけて日に焼けた頭を横に振るばかりで、とても頼りになりそうになかった。  ああ、全人類みんな、まっせんみたいにわかりやすければ、爆破予告犯を見つけ出すのも簡単なのになあ。とにかく片っ端から、「あんた、犯人?」って聞いて回るだけでいいんだから。  そのような考えても仕方のないことを現実逃避のように想像しながら、わたしは職員室前を後にした。  自分の妄想がこれ以上ない皮肉に感じられて、歩を進めながら思わず苦笑いしてしまう。  考えてみれば、犯人よりも、まっせんよりも、わかりやすいのはわたしの方かもしれない。
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