緊張感のない緊急事態

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「それにしては警察来ないんだね。これはもう、爆発物処理班の出番でしょ。映画とかドラマなら爆発物を仕掛けられたら、学校中を捜査したりするよね」  そういえば、先ほどから校内を走り回っているというのに、爆発物処理班どころか警察関係者らしき姿のひとつも見ていない。 「綾奈の言うとおりかも。だとしたら、警察に通報すらしてないってこと? やっぱり爆破予告はハッタリで、本当に爆弾が仕掛けられているわけじゃないんだね。まぁ、そりゃあそうか」 「本当に仕掛けられてたら、まっきー、犯人を探すより先に、爆弾を探さなきゃいけないところだったね」 「うっ、冷静に考えたらそれはちょっとこわいかも」  そんな会話を交わすと、わたしは綾奈とひととき、冗談まじりに笑い合った。  一方で、本当かどうかもわからない爆破予告のために文化祭が中止になりそうだとわかると、余計にもどかしさが募っていく。  ありもしない爆発物がこれほどの一大事を引き起こして、大人たちを狼狽させているのはちょっと皮肉だけれど。 「でも、なんか意外」と綾奈がつぶやいたのを、わたしは「なにが?」と聞き返す。 「だって仮にも、爆破予告されてるんだよ? 学校としては責任問題になりかねないし、通報しない選択肢なんかなさそうなのに。すぐに校内の全生徒を避難させたっておかしくない状況だよね」 「まったく本気にしてないって感じでもなかったよ。まっせんは、このままだと中止になるって言ってたし。先生たちも半信半疑なのかなあ」 「文化祭中止にするのなら、ますます変だよ。警察どころか、生徒、保護者も含めて(おおや)けにするってことでしょ? まっきーが聞いた最終決定が午後三時っていうのも遅すぎない?」  たしかにそうだ。文化祭中止にしても、警察への通報にしても、どうして、二時間なんていう中途半端な猶予を設けたりしたんだろう。
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