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そこまで考えて、はっとした。
先ほど職員室前で聞いた、まっせんの最後の台詞が思い返される。
「おい牧野、あまり大ごとにするなよ。爆破予告したやつも、考え直して名乗り出てくるかもしれないからな」という一言。
爆破予告という重大犯行には、あまりに似つかわしくない。もうひとつ緊張感のない、気の抜けた口調だった。
こっちの気も知らないで、と腹が立ってさっきは深く考えなかったけれど、外部の見知らぬ人間に対する言い方には思えなかった。
まっせんは普段から気のいい先生だけど、あれは……なんというか一種のやさしさ?
「そうか、もしかしたら……犯人はうちの学校の生徒かもしれない」
「えっ? まっきー、どういうこと?」
まるで身内に対して情けをかけたかのようだった、まっせんのようすを綾奈に説明し、たたみかける。
「先生たちの間では、予告状の文面とか届けられた場所とかの手がかりから、校内の生徒の仕業だって見当がついているんじゃないかな」
それなら、二時間という猶予をとって、保留にした意味も分かる。
「なるほど。生徒が犯人なら、警察沙汰にせず済ませられるならそれに越したことはないもんね。この二時間の間に自首してくるようなら、内々で済ませちゃおうってことか」
「おそらく、文化祭中止に踏み切ることのできる、ギリギリの時間が午後三時なんだ。それまで中止に向けた準備はしつつ、通報するのは待とうってことだね」
わたしの推測を聞いた綾奈は、いったん考えるそぶりを見せてから、「それなら私、心当たりあるかも」と、ためらいがちに口を開いた。
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