文化祭を厭う者

1/6
前へ
/41ページ
次へ

文化祭を厭う者

「うちのクラスの金森(かなもり)くんって、まっきー、わかるかな? もともと協調性がないっていうか、みんなでなにかをするのを嫌うタイプなんだけどね……」  綾奈の話によると、金森くんは文化祭を前にした今、クラスで目に見えて孤立しているらしい。  毎日放課後、クラス全員そろってコーラスの練習をすることになっているのに、金森くんがクラスメイトの隙を見計らって、ひとりで帰宅してしまうというのだ。  終礼後、さぁ練習を始めようと思った段階で、すでにかばんごと姿を消していることも少なくないのだとか。  金森くんとは同じクラスになったことがなくて面識はないけれど、名前と顔だけは知っている。  量の多い、ごわごわとした髪の毛を眼の間際までぶら下げた男子で、見るからに肥満と言える体型。ところ構わず、暗い雰囲気を振りまいているイメージだ。 「せめてさぁ部活組がいなくなる夕方までは残ってほしいのに、さっさと帰っちゃうわけ。本番三日前になっても一向に変わらないもんだから、ついに指揮の佐脇(さわき)さんがキレちゃって」  金森くんはその日も、いつものように練習前の喧騒に乗じて、こっそり教室を出ようとしたらしい。  しかし、彼の連日のサボりを腹に据えかねていた、クラスのまとめ役の佐脇さんに見つかってしまった。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加