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「ちょっと金森。あんた、いい加減にしなよ! コーラスなんだから、みんなであわせないと話になんないでしょ! 勝手なことしないでよねっ」
「おまえにそんなこと命令される筋合いねえっつぅの。授業は義務教育だけど、文化祭なんてただの行事なんだから、参加するもしないも自由だろ!」
「なに言ってんのよ! あんたそんなんだから友達いないんでしょうが! どうせ早く家に帰ったところで、気持ち悪いアニメでも見てるんじゃないの?」
ふたりの言い合いをただ傍観していた綾奈たちクラスメイトは、それは佐脇さんが言いすぎなんじゃない、と囁き合った。
そのざわめきをかき消すように、金森くんはわめき立てた。
「ふざけんな! そんなに大事な文化祭ならなぁ、オレがぶっつぶしてやるよ!」
すごい剣幕だったんだよ、と綾奈はわたしに向かって言った。
陰鬱で、むすっと押し黙っているイメージしかない金森くんが、リーダー格の佐脇さんとやり合うなんて想像もできなかった。
それほど貶されたことに腹が立ったのかもしれない。
ささやかな同情心が湧いた。
自分の好きなものを他人から悪く言われたときの気持ちは、わたしにも心当たりがあった。自分が想いを寄せている彼のことを思い出す。
小林くんは目立たないとは言っても、吹奏楽部では数少ない男子だから、部内の女子に噂話されているのを小耳に挟むことは少なくなかった。
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