爆破予告された文化祭

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 明日午前十時、わたしたちの中学を何者かが爆破しようとしている――。  興奮した辻村さんが言うには、そのような予告が記された手紙が学校に届いたと、職員室の前を通ったときに聞こえてきたというのだ。  明日の出演の手筈(てはず)を最終確認しようと担任を探しに行ったことも忘れ、教室まですっ飛んで帰ってきたらしい。  辻村さんが仕入れてきたばかりの極秘情報をまくし立てるようすは、真に迫っていた。  わたしたちのクラスが上演する劇の主役ドロシーや、西の悪い魔女、魔法使いオズ、ほかのどんなキャラクターが台詞を披露するときよりも、一身に、みんなの視線をひとり占めにしている。  ひととおり辻村さんがいきさつを話し終えると、さっきまで通し稽古の真っ最中で、キャスト以外は沈黙していた午後の教室が、にわかに騒がしくなった。 「まじかよ。学校が吹っ飛んだら、しばらく授業なくなるんじゃね?」 「本当に爆発したら、しばらくどころか卒業までに復旧しないかもよ」 「えーっ、よりによって文化祭にあわせて、そんな事件起こさなくても……」 「やるなら試験前にやってくれよ~」 「おいおい、そんなのどうせいたずらだろ。どっかの大学だか高校だかが爆破予告されたってニュースでときどき聞くけどさ、実際に爆発した試しがあったかよ」  爆発という聞き慣れない単語を持て余して、騒々しさが増していく。
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