相棒は近くにいる

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 わざわざ学校全体を巻き込んで休校させようとする、その意図はなんだろう。  法に触れてまで実行するほどのメリットが、なにかあるのだろうか。  単なる愉快犯? わたしのような文化祭を楽しみにする人間への嫌がらせとか? 「それなら、案外近くで見ていたりするのかも……」  思わず声に出して、そうつぶやいたわたしの後ろで、じゃりっと小石を踏む音がした。 「あっ、不覚です。ばれてしまいましたか」  振り向くと、校門脇の古びた百葉箱の陰に、小柄な女子生徒が立っていた。フレームの細い丸眼鏡が、鼻からずり落ちそうになっている。  わたしと同じく、校舎外だというのに上履きのままだ。  学年ごとに色分けされている学校指定の上靴のラインは赤、ということは一年生か。 「ばれたって……まさか、あなたが爆破予告の犯人なの?」 「えっ、あ~、自作自演ですか。その手は考え付かなかったですね~。今後の参考にさせてもらいます」  わたしが三年生だということは上履きの色でわかっているだろうに、制服に着られたような頼りない見た目のわりに、ずいぶんずぶとい子だ。  いまいち会話が嚙み合っていないことに不安をおぼえたが、この際そんなことは言っていられない。  わたしは持てる限りの悲壮感を総動員して、目の前の彼女に迫った。
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