相棒は近くにいる

4/4
前へ
/41ページ
次へ
「新聞部……。爆破予告のことを、学校新聞の記事にするつもりってこと?」 「そうですよ~。入部して半年経つっていうのに恥ずかしながら、まだ特ダネを出せていなくってね。今回の事件の舞台は、我が校きっての一大イベント文化祭。そこを、どかーんと景気よく爆破予告。初の特ダネにふさわしいでしょう。これを逃す手はありませんから。さっき先輩に言われて、自作自演もありだな~って気付いちゃいましたけど」  ひとつ尋ねただけなのに、よくしゃべる一年生だ。この調子なら記者よりも、取材される側のほうがしっくりくる。  わたしの不用意な発言のせいで、彼女が今後、自ら事件を起こして記事を捏造するタイプの記者にならないことを、内心でひそかに願った。 「いやぁ、残念でしたね。あの人……金森さんっていうんですか? 彼を問い詰めている先輩を見つけて、これは現行犯逮捕ならぬ現行犯取材のチャンス、って期待したんですけどね~」 「わたしはとにかく文化祭が中止にならないよう必死なだけで探偵とかじゃないし、勝手に期待されても困るんだけど。っていうか、よくわたしたちのことに気付いたよね。さすが新聞部」  皮肉を込めてわたしがそう言うと、神崎さんはにんまりと目じりを下げて、露骨にうれしそうな顔をした。  犯人相手の取材なんて、たとえ実現したとしても腹の探り合いだろうに、出会ったばかりの相手に腹の内をそう簡単に見せていいのか、記者。 「お褒めいただいたところ恐縮ですけど、あたしはこいつを見に来たんです」
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加