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「爆破予告って言っても、職員室はわりあい落ち着いているし、生徒に避難の指示が出ないところから見ても、十中八九デマでしょうね。
予告だけの事件だなんて絵にならないから、特ダネとしては弱いんですよね~。どうせなら、本当に爆発してくれれば面白かったのに」
仮にも自分の学校が爆破予告されているというのに、他人事のような口調で、神崎さんは物騒なことを平気で口にした。
もっともわたしも最初に爆破予告を知ったときには、文化祭当日、小林くんとの演奏中なら爆発してもいい、それで死ぬなら本望だ、などと思ったのだけれども。
「せめて予告状が、もう少しパンチの利いた言い回しとか、奇抜なデザインとか凝っていてくれたらよかったのに。
あんな無骨な紙切れを公開しても全然映えないですよ~」
「えっ、紙切れ? 神崎さん、まさか予告状の実物がどんなのか知ってるの?」
「うふふ、先輩はやっぱり素人さんですね。実はあたし、持っているんです。予告状を接写した写真を」
彼女と出会って初めて、心の底から驚いた瞬間だった。
「うそでしょ? そんな重大なものをいったいどうやって……」
「それはもちろん内緒です。取材源の秘匿は、記者の鉄則ですからね」
神崎さんは自慢げにデジタルカメラの撮影データを遡ると、こちらに手渡してきた。
『文化祭を延期しなければ明日午前十時、当校を爆破する。』
そこに写っていたのは、神崎さんの言ったとおり、シンプルすぎる文面だった。
学校爆破などという大それた事件の予告とはとても思えない簡素な白いコピー用紙に、こじんまりとしたゴシック体で印字された文字列。
たしかに、これを記事に添えるぐらいなら、郵便受けの写真の方が幾分かマシだ。
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