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おじさんは郵便受けを検め、中になにも入れられていないことを確認すると安堵したのか、
「こんなところで油売ってないで、さっさと文化祭の準備に戻れよー」と言い残して、ごみ置き場の方へと引き返していった。
その姿が見えなくなるのも待たず、わたしたちは目と目を見交わした。
「神崎さん!」
「先輩! 重大な手がかりをゲットですね!」
「でも男子生徒っていうだけじゃ、容疑者を半分に絞れただけだよね。制服姿だったっていうのも、演劇のキャストじゃないっていうぐらいの情報でしかないし……」
目を輝かせかけた神崎さんが、ため息をついた。
「目撃者がいるなんて、これはいただきだ! と思ったんですけどね……」
「それにしても、なんで校内から投函したんだろうね。それも犯行日前日の昼なんていうギリギリの時間帯に。見つけてもらえなかったら意味ないじゃん」
「うーん、さっきの用務員が言っていたように、校門のあたりって日中、校内の人間は近寄らないし、狙い目だと思ったんじゃないですかね」
「でも、おじさんに見られていることに気付いた上で投函したって言ってたね」
「見つけてほしかったんでしょうね。さっき先輩が言ったとおり」
どうにも矛盾している犯行だ。
予告状を確実に見つけてほしくて、かつ犯行現場を見られたくないのならば、もっと早朝か夜中に外から投函するとか、いろいろ方法はあるだろう。
実際、用務員に制服姿を目撃されて、不用意に容疑者を絞らせてしまっているのだ。
なぜこんなに、危ない橋を渡ったのだろうか。
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