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ジャージ姿で職員室から出てきた担任を見つけると、すかさずその腕を捕まえる。
そのまま強引に、「ちょっと、まっせん。こっち来て!」と廊下を曲がって、昇降口へと連れ出した。
こんなとき頼りにするのは、まっせんに限る。
だれが言い出したのか、「松山先生」を縮めた「まっせん」というあだ名は本人公認のものであり、そこからわかるとおり生徒から若干なめられて……いや、生徒とも友好的なのだ。
わたしの手に引っ張られながら「おい、なんだよ牧野」と戸惑うまっせんとともに、下駄箱の間に入り込む。
普段、教室ではおとなしくしているわたしの勢いに気圧されているらしい、まっせんを問い詰めた。
「まっせん、爆破予告ってほんとなの? 文化祭中止になったりしないよね!?」
「それをどこで……?」
頭を掻くまっせんを見て、爆破予告が本当なのだと確信した。
まっせんは体育教諭らしく快活だが、うそがつけない性分なのだ。
「わたしたち最後の文化祭なんだよ! 本当かどうかもわからない犯行予告で中止だなんて、そんなのないよ!」
「落ち着け、牧野。大丈夫だ。と言いたいところだが、犯人がすぐに予告を取り下げでもしないかぎり厳しいだろうな……。
予告状の真偽にかかわらず、学校は閉鎖せざるを得ない。すでに、そのための調整も進んでいる。文化祭は中止……まぁ、良くて延期ってところだろう」
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